Pro Tennis Player西郷 里奈Rina Saigo

2000年10月17日千葉県佐倉市生まれ。
2019年 秀明八千代高等学校卒業
2019年 プロ転向

主な戦績
2018年 全豪オープンジュニア出場 ダブルスベスト16
2019年〜姉妹ダブルス 優勝3回/準優勝4回

普通では経験できない人生を歩ませてもらっています。

父がコーチをしていて、姉もプレーヤーで、母も祖父母も家族みんながテニスをしている環境だったので、もう当たり前のようにコートに立っていました。それからはもうテニス一筋!です。学校で友達が部活をしているのを見て「良いなー」と思うことはありましたが、でも他の競技をやろうと考えたことはありませんでしたね。
実際にプロを意識し始めたのは、まずは高校を決めるとき。でもその時点ではまだハッキリ考えてはいなかったんです。転機が訪れたのは17歳のとき。少しずつランキングが上がっている最中だったので、そこからジュニアのグランドスラム大会を目指して一気に海外を回り始めたんです。そこで更にランキングを伸ばすことができて、念願のグランドスラムにも出場が決定。初めて立ったその舞台は、言葉で表現するのが難しいですが、とても華やかで、これまでに参加してきた大会と全く違うのだということを思い知らされました。あのときの感覚は忘れられません。「またここを目指したい!」と決めて、高校卒業後プロへの道を歩み始めました。

異文化に触れ続ける日々。

小さなころから海外を飛び回っているので、異文化の中で過ごすことにも随分慣れましたよ。その中でも、今までで一番びっくりした海外での体験は中国の大会に出場したときのこと。夜に空港に到着したんですが、ホテルまで向かおうとタクシーを探していたら怪しい人たちに荷物を勝手に持っていかれそうになったんです。なんとか事なきを得たんですが、日本では到底考えられないようなことが海外では起こりうるということを痛感した出来事でしたね。チームスポーツと違って、テニス選手は試合日程の調整から飛行機やホテルの手配など全てを自分で管理しなければならないことが多いです。そうした能力を小さなころから身に着けていたことは、今に繋がるとても重要なことだったのだなと思います。

テニスとの出会いから今までを振り返って。

小学生・中学生の頃は、普通に学校に行って塾に行って友達と遊んで…という生活に憧れることもありました。でも、これまでの人生を振り返ってみると、私ってとてもとても貴重な経験を数えきれないほど味わってきているんですよね。テニスのない人生だったら、きっとこうはなれなかった。だから、今では自信を持って「この人生を歩んで良かった」と思えます。
それに、とっても大切な仲間たちとも出会うことができました。それは高校で一緒にインターハイを戦った仲間たち。高校に入るまでは団体戦を経験したことがなかったのですが、団結して戦うことの喜びをここで初めて知りました。みんなで声を掛け合って、応援し合って、そうして手に入れた勝利は格別でしたね。何より、試合が楽しくて楽しくて仕方がなかったです。
競技をしていたら悔しいことも苦しいこともあるけれど、それ以上に楽しいこと嬉しいことも沢山あるし、大切な家族や仲間と深く繋がることができています。テニスがあるから豊かな人生を歩めていると思うんです。

テニスとの向き合い方

こんなに長い期間、海外に出ることなく試合に出ることなく過ごすのは初めてのことで、当初はとても戸惑いました。最初のうちは自粛要請でコートも使うことがでえず、練習すらまともにできなかったんです。でも、こんなにテニスから離れた時間というのはすごく貴重で、思わぬリフレッシュ期間になったのも事実なんです。実家に長期間滞在することも珍しいことだったし、家族みんなで一緒になって庭で野菜を育てたりしてゆっくりできたことは、すごく楽しい時間でしたね。7月に国内の大会が再開するまで、なかなか試合に出られずもどかしい気持ちもありましたが、心も体もデトックスできる時間ができたのは結果的には良かったことなのかな、と思っています。

コロナ禍でのテニスとの向き合い方

遠征以外の日々は、常にトレーニングです。午前・午後とコートで練習をして、その後トレーニングをおこなって帰宅。というルーティーン。最近は、コート練習後毎日5-8kmほどの走り込みをしています。随分慣れてはきましたが、昔から長距離があんまり好きじゃないので、けっこうしんどいです。もともと継続することが苦手で、だから今までにも苦労することは多くて。「勝ちたい!でもきついことからは逃げたい」という葛藤を常に抱えています。そんなときの自分なりのモチベーションアップの方法は、同じプロ選手を意識すること。尊敬する選手の動画を見たり、ライバルの試合結果を見たりするとふつふつと「負けたくない!」という気持ちになれるんですよね!

食欲との向き合い方。

アスリートとして、食事にも常に気を配っています。でも、実際には無性にハンバーガーが食べたくなってしまうことだって全然あるんですよね(笑)。食事や体重制限が必要なアスリート、特に体重管理が難しい女性アスリートにとって、そういう場面でのメンタルのコントロールってとても重要です。私の場合は、自分が乳製品アレルギー持ちということもあり”諦められる力”が身に付いていると思います。食べたい!という衝動にかられても、一呼吸おくことで「まぁいいか!」と思えるように言い聞かせるんです。メンタルのコントロール方法は様々だと思いますが、私にはいつの間にかそんな考え方が習慣づいています。
でもですね、たまに姉と一緒に「今日はピザいっぱい食べるぞ!!」って決めて楽しむ日もあるんです。オフの前日なんかに決行するんですが、その日はいつも以上に身体をメチャクチャ動かして、トレーニング頑張ります(笑)。そうやって食べたものは、もう本当に美味しんですよ!姉も私も食べることが大好きなので、食事面ではそんなふうに上手く折り合いをつけながら、バランスを取りながら過ごしています。

選手として、人として、もっと幅を広げていきたい。

プロになってからは、ダブルスでの試合はほとんど姉とペアを組んで出場しています。海外の選手と組んでいたジュニア時代と違って、事前に綿密に作戦を立てることができるし、試合の中でも意志疎通がしやすいのでとてもプレーしやすいです。でも姉と組むと、「勝ちたい!!」という気持ちが強すぎてものすごく緊張してしまうので、それはデメリットですね。。(笑)
将来は、シングルスはもちろんだけど、姉妹ダブルスでもグランドスラムやオリンピックで活躍できるような選手になることが目標です。そして、姉とよく話しているのは「強さだけではなく、周りに影響を与えられるような・応援されるような選手を目指したいね」ということ。将来的には、テニスから学んだものをテニスの枠にとらわれず発信できる存在になりたいです。例えば、先ほどの”食事との向き合い方”だって、アスリートではなくても皆さん日常的に関わりのある分野だと思うんです。是非いつかファンの皆さんと「食事について一緒に考える」など多彩なテーマでお話しできるようなイベントを企画できたらきっと楽しいですよね。 最近では、テレビや書籍だけでなく、SNSなどでもみなさんと繋がることができるようになりました。様々なメディアを通して、私たちがアスリートとして日々考えていること・学んでいることを発信し、影響力のある選手になることが私の夢です。