Pro Tennis Player西郷 幸奈Yukina Saigo

1996年4月27日千葉県佐倉市生まれ。
2015年 学芸館高等学校卒業
2015年にプロ転向

主な戦績
2008年 全日本ジュニア選手権U12 優勝
2011年 全国中学生大会 準優勝
2014年 全豪オープンジュニア ベスト32
2019年 〜姉妹ダブルスでツアーに参戦し、優勝3回・準優勝4回

昔は泣きながら試合していたそうです(笑)

我が家はテニス一家で、父と祖母はテニスコーチ・母も経験者。物心ついた時にはコートにいるのが当たり前になっていました。ですので、”出会い”と言われると正直覚えていないんですが、おそらく、4歳くらいの頃からラケットを握っていたんだと思います。古い記憶を辿っていくと最初はやっぱり「楽しい!」という気持ちからスタートしていましたね。でも、5歳頃から試合に出場し始めたんですが、ルールは自分で把握していなくちゃいけないし、対戦相手は自分よりも段違いに大きい小学校中学年くらいのお兄さん・お姉さんばかりだし、わけもわからず最初は泣きながら試合していたそうです(笑)。

小さなころからの遠征経験が大きな糧に。

初めて海外の試合に出たのは小学校1年生のとき。父と一緒にアメリカへ行き、大会に出場しました。周りの選手たちと比べても、海外デビューの歳はかなり早かったと思いますよ。5年生に上がると、親と離れての遠征にも参加するようになり、中学以降は実際にジュニアの世界大会に参加するようになりました。数えてみたら、これまでに訪れた国の数は25ヵ国以上!小さな時から海外の空気を吸って、海外の選手とプレーできる機会があったことは私の大きな成長基盤でした。父が小さなころから色々と挑戦させてくれていたんだな、と今更ながら感じています。
1人で遠征に行くと現地で練習相手も見つけなくちゃいけないんですが、14歳で参加したある大会では10人くらい声をかけたのに全員に振られてしまう、ということもありました。今では、facebookやInstagramのメッセージを使って事前に相手を見つけておく、というのが主流なんですが、当時はもう直接アタックあるのみ(笑)。挫けそうになったけれど、めげずに声をかけていってようやく相手を見つけられた時は嬉しかったですね。SNSがある今は便利だけど、そんな風に積極的にコミュニケーションをはかる時代も経験できたのはすごく良かったです。

苦労したベトナム遠征

これまでにいくつもの国を巡ってきた中でも、とびきり衝撃を受けたのは14歳のときに訪れたベトナムです。このときは、現地のナショナルチームに参加させてもらっていたんですが、日本人チームではなく単身で参加するというのが初めての経験でしたので、普段はあまり感じることのないホームシックもけっこうありました。”日本人は自分1人だけ”という状況で、海外の選手と同じ部屋で過ごしたり、一緒にゴハンを食べたり、練習したり、というのは想像以上にしんどいです。なによりも、積極的にコミュニケーションを取れないことがとてもストレスでしたし、それにやっぱり遠征面での感覚も日本とは違っていて。試合前日でも、日本だとあまり衛生的とは言えないような屋台で食事を取っていたのはかなりのカルチャーショックでしたね。でも今に至るまでに数多くの国を訪れ、ベトナムでもアメリカでもチュニジアでもヨーロッパでも、本当に様々な文化や考え方があることを知って、そのそれぞれに柔軟に対応する能力は遠征の中で身につけられていっていると思います。

プロとしての出発

12歳の時に全日本ジュニアのタイトルを取ることができて、その辺りからプロになることは意識していたと思うんです。「あ、やれるかも」って。でも、心を決めたのは17歳のとき。ずっと世界のジュニアツアーを回っていたんですが、17歳のときに全豪オープンのジュニア大会に出場することができたんです。この大会って、もうプロと同じ環境でプレーができるんですよ。客席は超満員で、世界のトップ選手たちがすぐ隣にいて同じ空間で食事していたりして…。そんな今まで経験したことのないような、とてもとても華やかな舞台に初めて立って、「あぁ、やるからにはまたこの舞台に立ちたい!」という気持ちが確実に沸き上がったのをよく覚えています。とても鮮烈な体験でした。

これからの課題

私は昔から、努力したり、積み重ねたり、継続したり、というのは得意なんです。でも、プロの世界に入ったらそれは当たり前のことで、それだけでは通用しなくなります。今までは、ただ「頑張って頑張って鍛える」ということを繰り返してきたけれど、きっとそれだけではダメなんです。”頑張る”とか”必死にやる”というところだけに頼りきってしまうのではなくて、本当に自分に足りないところを意識してやれるかとか、視野を広げるとか、もう少し工夫していくことが必要なのかもしれません。良くも悪くも、すごく真面目なんですよね(笑)。真面目、という点でいうとそれは日本人選手全体でも共通しているところかもしれません。海外の選手って、すごくオンオフの切替が上手な人が多いんですよ。試合中はものすごくハングリーだけど、リラックできている時間は日本人よりも圧倒的に長いように思います。オフの時はとことん休む!という感じ。私もテニス一筋で突き進むのではなくて、もっと全体のバランスを取れるようになれるといいんですけど…。難しいところです(笑)。

“食”を大切にしています

毎年だいたい25~30ほどの大会に参加しているので、1年の半分は海外での生活です。遠征中には毎週違う国やホテルに移動しなくてはならないので、体調管理にはかなり気を付けています。特に食事の面ですね。遠征中は、もちろん食事も自分たちで調達をします。周りの選手は、海外の食事が苦手で日本食のお店を見つけに行く人も多いですが、私も妹も現地の美味しいものを探して食べるのが大好きです!2人でいつもそれを楽しみにしているんですよ(笑)。
それから自分で料理するのも大好きです!スパイスから作るカレーが好きでよく作っていますよ。お菓子も作ったりするんですが、自分で作るならやっぱり身体に良くて、罪悪感少なく食べられるようなものを作りたいじゃないですか。妹が乳製品アレルギーを持っているということもあって、しっかり素材にもこだわって良い素材で美味しくヘルシーに仕上げることを心がけています。

自分の身体に合ったものを選んでいきたい。

料理は、色んな本を読んだり、色んな人に話を聞かせてもらったりして、自分なりに研究をしています。影響を受けたものの中に、サッカー日本代表の長友選手の”ファットアダプト”という食事方があるんですが、これは、糖質控えめにして脂質とたんぱく質をしっかり取る、というものです。これによりエネルギーや集中力が持続すると言われています。でもこれをそのままそっくり実行してしまうと、自分の身体に合わなくて体重が落ちすぎたりしてしまったので、上手くカスタマイズして自分に合うやり方を見つけていきました。身体が資本となる競技をしていて、やっぱり自分の身体と対話することの重要さはすごく感じますよね。

食事との向き合い方を、伝えていきたい。

プロテニスプレーヤーとしてやっていく中で、これまで食事に関してストイックに取り組んできています。タンパク質をこれだけ取ろう、とか糖質はこれだけに制限しよう、とか。…でも本音を言ってしまえば、本当は毎日毎日そんな数字を気にして食事するのって嫌なんです(笑)。だからこそ、食事や体重との上手な向き合い方というか、食材の選び方から気持ちのコントロールまで、自分なりに工夫して見つけてきたものがあります。女性は特にダイエットの面で悩むことも多いと思うので、是非そんな私の食事への考え方について皆さんにお伝えできる場が設けられたらいいなと考えています。スポーツ栄養学とか、そういう観点からのお話もできるといいな。いつも応援してくださる皆さんに少しでも恩返しできる機会ができれば嬉しいです。